すみだ水族館 自然水景

633

ネイチャーアクアリウムという水景色があります。
水槽内に自然の景色を作り出すものです。

特別な水槽が必要ですが、その水槽と、このジャンルを生み出した人が、 天野 尚(あまのたかし)さんです。
かつては競輪のプロ選手で、引退後に子供時代に見た田んぼの水溜りなどで生きる生物や、川の水中を水槽にできないかと試行錯誤を繰り返し、アクアデザインアマノという会社を立ち上げ、未だかつてない水景の世界を創り出しました。

写真家としては、8×20という世界一大きなフィルムでアマゾンやボルネオ、 佐渡島、龍安寺の石庭などを撮影しました。それは、プリントの前に立つと、視力が良くなったと錯覚するくらい素晴らしいものでした。 

8×20で撮影中の現場の様子

2008年北海道洞爺湖サミットでは、世界の首脳陣の集まる場所に天野さんの作品が展示されました。

2008年北海道洞爺湖サミット
新潟本社での天野氏。これも大型のカメラですね。ルーぺでピントを確認中。
天野さんはアンティークの金魚鉢のコレクターでもありました。
アマゾンで撮影中の天野氏 かっこいい!

天野さんは、惜しくも2015年に亡くなられましたが、その精神は水槽を愛する世界中の人々に今も受け継がれています。
作品は新潟の自宅や、新潟の本社ギャラリーに残っていますが、一般の人が簡単に作品を目にすることができるのは、東京スカイツリーの下にある、すみだ水族館です。

7m石組:草原と石景・天野 尚
4m流木:原生林の構図・天野 尚
3m水連:スイレンの水辺・天野 尚
180cm石組:熱帯のパラダイス・天野 尚

そこには、7mの巨大な水槽のほかに4つの水槽があります。
そのうちの1つは、8年を経てメンテナンスの都合で、
いつも天野氏と一緒に撮影に同行していた本間裕介さんが
天野さんのオリジナルに手を加えて新たな作品となっていますので
現在、オリジナル作品は、4水槽が残っています。

180cm 流木:楽園の泉・本間裕介

8Kにてアーカイブした水槽は大変美しいですが、
なんといっても実物を肉眼で見るのが一番です。
東京スカイツリーに行ったら、すみだ水族館へ!

Vimeoでは8Kで, Youtubeでは、HDでご覧いただけます。

7m石組:草原と石景  
( 天野尚・W710×D110×H120cm・2012年3月13日 )
協力:すみだ水族館、AquaDesignAmano YouTube

自然の壮大なスケールを表現したレイアウトで、雄大な草原の中の石群が遠い山並みを連想させる。多種多様な水草と群泳するカージナルテトラたちは、楽しさや癒しを与えてくれる。

180石組:熱帯のパラダイス( 天野尚・W180×D120×H60cm・2013年7月16日 )

youtube

4m流木:原生林の構図 ( 天野尚・W414×D164×H170cm・2012年3月13日 )新潟の天野さんの自宅にある大水槽をヒントにすみだ水族館のために作った水槽で原生林を表現している。youtube

3m水蓮:スイレンの水辺 
( 天野尚・W300×D120×H115cm・2013年7月17日 ) youtube

スイレンが水面を飾る熱帯の池沼に潜ったときのイメージからインスピレーションを受け制作したレイアウト。鮮やかな熱帯魚が水中景観に彩りを添え、熱帯の雰囲気を表している。

180cm 流木:楽園の泉 (本間裕介・W180×D120×H60cm・2020年3月6日)
長年にわたり、大判カメラでの撮影に同行した本間裕介さんが
経年と共に変化した水槽をリニューアルした作品だそうです。youtube

制作当時の、天野 尚さんのコメントです。

「この空間に足を踏み入れる誰もが一瞬で魅了されるような水槽を創るため、
今までにないほどレイアウトの構成にも力が入り、シミュレーションを繰り返した。レイアウトの勝負はいつでも現場であり、いかに効率的に進めることができるかがキーになる。
なぜなら、スピーディーに組まれていくレイアウトには勢いがあり、
そこには直感でしか生まれない絶妙な感覚が含まれていくからである。
事前の準備が完璧であればあるほど、本番では、想定していたものを
越えるオリジナリティーが自分の余地から引き出される。
4m水槽にはアマゾンの流木を使い、ダイナミックなジャングルの中に
みる緻密で繊細な水中世界。
7m水槽には山の石を使い、壮大な草原と山の風景をパノラマ的に
水景で表現した。
原寸大の自然と、風景を投影した箱庭のような水景。
まったく異なる世界観を表しているようで、
この二つのレイアウトは同じ空間の中で完璧に調和している。

来場者の目にまず飛びこむのは、魚ではなく、水中で生い茂る水草の緑だ。
魚を見せるための水槽でなく、魚が生きる環境を見せる水槽。
水族館に来場する人のほとんどがネイチャーアクアリウムを知らない。
だからこそ、この世界から感じるものを、ただ純粋に受け入れ、
自由な想いを持ち帰ってほしい。
世界一のネイチャーアクアリウムは、創るだけでは完成しない。
見た人の心に、決して消えない何かを残すこと。
それをなし得たとき、そのネイチャーアクアリウムは世界一の価値を持つのだろう。」

水槽を管理するアクアデザインアマノのメンバー

夜の閉館後から開館前まで夜通し、メンテナンスを行います。
コメントをいただきました。

(水槽管理について)
これほどの大型水槽群は我々にとっても未知の部分が多く、日々試行錯誤の連続でしたが、現在では、天野が思い描いていた水景を創り上げることができたと思っています。特に水深1メートル以上の水槽でグロッソスティグマ(底面に絨毯状に生えた水草)が美しく生えそろっている水槽は、世界中を探してもすみだ水族館だけだと思っているので、注目していただきたいです。

グロッソスティグマ(底面に絨毯状に生えた水草)


これまで9年近くほぼ休み無くメンテナンスを続けてきましたが、
我々にとっては毎日見ている水槽でも、
お客様にとってはこの水景を見られる一生で一度の機会かもしれない、
そう考えると一日も気を抜くことはできません。
その日できる最高の状態に仕上げるため日々がんばっています。

ということで、大変な作業があって、水族館で美しい水景色が見えるわけですね。ぜひ、本物をご覧ください。

撮影においては、すみだ水族館の草野さん、そしてアクアデザインアマノのメンバーさんたち、そして撮影機材REDの8Kを準備してくれた羽仁正樹さん、ありがとうございました。1回目は、閉館後の撮影だったので、なんとお魚さんが眠ってしまって、もう一度朝に撮影に伺うことになったりして、貴重な経験をしました。                    撮影・編集・文章 中野裕之

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA